JEA
Journal of Epidemiology vol.14-(1)

1) 中学生における睡眠質問票の妥当性
Validity of children sleep diary questionnaire among junior high school children
ガイナ アレクサンドル(富山医科薬科大学保健医学教室)、関根道和、陳暁莉、濱西島子、鏡森定信
(P1-4)
背景と目的:日本における小児の自己申告による睡眠の質と量の指標の妥当性はまだ確立されていない。本研究の目的は、小児の自己申告による主観的睡眠習慣の記録と機器装着から得る客観的な測定データとの関係を評価することにある。方法:調査期間は平成15年10月1日~11月11日、対象者は富山市の2中学校の健常中学2年生47人(13-14歳)のうち記録が完全な42人を解析の対象とした。本研究の睡眠データは、体動の感知により身体活動状況が記録可能な腕時計型測定機器Actiwatchを1週間継続装着して得たデータと、本調査用に作成した生活習慣と睡眠に関するアンケート票による調査結果を用いて、就寝時間、睡眠潜時、睡眠開始時刻、睡眠終了時刻、覚醒時間および、みなし睡眠時間を記録し、主観的・客観的な睡眠の質と量を測定した。富山市内の2中学校の2年生男子141人の保護者に学校を介して、本調査への参加協力を依頼し同意を得た47人を研究対象とした。装着不備などにより記録が不完全だった5人のデータを除外し、7日間の測定データのうち、土・日曜日を除いた平常活動の5日間についての睡眠指標の平均値を用いて分析した。Pearson'sの相関係数および対応のあるt―検定を用いて、主観的・客観的な睡眠パラメータの相互関係およびその差を分析した。結果:主観的・客観的な睡眠パラメータの相関係数については、睡眠潜時に対して0.49(p<0.001)、睡眠開始時刻に対して0.99(p<0.001)、睡眠終了時刻に対して0.99(p<0.001)、および、みなし睡眠時間に対しては0.97(p<0.001)であった。主観的・客観的な睡眠パラメータの差については、睡眠潜時に対し7.67分(95%信頼区間[CI]4.64-10.71) 、睡眠始時刻に対し0:02分(95%CI:-0:01-0:05)、睡眠終了時刻に対し0:02分(95%CIに対して0:01-0:03) 、みなし睡眠時間に対しては8.19分(95%CI:4.93-11.45)であった。
結論:小児は、睡眠時間を過大評価する傾向にあったが、睡眠潜時を除いた主観および客観的睡眠指標の相関は高かった。この結果から、今回我々が使用したアンケート票は、小児の睡眠習慣を調査するために適用できると考えられる。
キーワード:妥当性、睡眠アンケート票、睡眠、小児、Actiwatch

2) 閉経前日本人女性における出生時体重と血清脂質濃度の関係
Association between Birth Weight and Serum Lipid Concentration in Premenopausal Japanese Women
金井要(岐阜大学医学部疫学・予防医学/鳥取県福祉保健部)、永田知里、清水弘之
(P5-9)
背景:出生時の低体重が心血管疾患死亡率上昇に関連することを示した報告があり、子宮内での成長がその後の心血管疾患リスクに関連する可能性を示唆している。血清脂質濃度は、心血管疾患の独立したリスク因子であり、出生時体重はその後の血清脂質濃度に影響を及ぼし、その結果、心疾患のリスクに関連するかもしれない。本研究では、閉経前20歳~46歳の日本人女性における出生時体重と血清脂質濃度の関係を評価した。その際に、食事や血清ホルモン状態等、交絡因子として関与する可能についても考慮した。
方法:閉経前日本人女性59人を対象に、体格、婚姻状態、教育年数、疾病歴、月経や出生歴に関する調査票に回答を得た。出生時体重は、母子手帳で確認した。各対象者の月経開始日の情報をもとに、月経周期の第2日目から第10日目まで食事記録をつけてもらい、各種栄養素摂取量を推定した。また、月経周期第11日目に採血をし、血清脂質(総脂質や高比重リポタンパク(HDL)コレステロール、トリグリセライド(TG))や血清ホルモン(エストロン、エストラジオール、及び性ホルモン結合グロブリン)の濃度を測定した。
結果:出生体重は、年齢補正後HDLコレステロールと著明な相関を示した(r=0.32、p=0.03)、しかし総脂質やTGと有意な相関を示さなかった。前述の交絡因子候補のうち、初経年齢はHDLコレステロールと統計的有意ではないものの正の相関関係を示したため(r=0.25、p=0.06)補正に用いた。出生時体重とHDLコレステロールの関連は年齢・初経年齢で補正後も有意な相関を示した。(r=0.29、p=0.03)。エストロゲンや他の性結合性グロブリンは血清脂質濃度と、年齢や次回月経日からの日数による補正後、有意な相関を示さなかった。各種栄養摂取量のうち総タンパク、カルシウム、鉄分は、年齢と総エネルギー量による補正後のHDLコレステロールと有意な相関を示した。
考察:本研究では、出生時体重とHDLコレステロールとの間に正の相関関係が認められ、子宮内での成長の度合いが、その後の血清脂質値ひいては心血管疾患のリスクに関係する可能性を示唆した。
キーワード:出生時体重、リポタンパク、HDL、閉経前、コレステロール、トリグリセライド

3)保健所でのHIV抗体検査受診者の実態
The Characteristics of People Requesting HIV Antibody Tests at Public Health Centers in Japan
渡辺晃紀(栃木県保健環境センター)、中村好一、城所敏英、嶋崎江美、長谷川嘉春、
田村嘉孝、谷原真一、橋本修二
(P10-16)
保健所でのHIV抗体検査受診者は、感染のハイリスク群である可能性があるにもかかわらず特性が明らかでなかっため、これらの者の特性を明らかにするために研究を行った。任意に協力を得た全国131の保健所を対象とし、2001年4月から2002年3月までを調査対象期間とした。対象期間中14,900人が受診し、協力が得られた8,972人に調査票を配布し、5,079人(56.6%)から回答を得た。対象期間内に実施されたHCV抗体検査受診目的の者を除いた4,102人について、特性を比較したほか、初回受診者と複数回受診者(リピーター)間で受診理由や感染危険行動の経験を比較した。特性では、男2,515人(61.3%)が女1,587人(38.7%)より多く、最多の年齢階級は25-29歳だった。リピーターは男で27.2%、女で21.3%存在した。受診理由では性的接触によるHIVへの感染不安が最も多かった。男では男性との性的接触の経験率が初回受診者(8.0%)よりリピーター(14.1%)で有意に高く、女では不特定多数との性的接触の経験率が初回受診者(27.3%)よりリピーター(39.6%)で有意に高かった。検査受診者の中にリピーターが存在すること、およびそれらの者が性的接触によるHIV感染の危険を有する特徴を持つことが明らかになった。
キーワード:HIV、HIV抗体検査、エイズ、感染危険行動、保健所

4) Surveillance of Mortality among Atomic Bomb Survivors Living in the United States Using the National Death Index
Yasuyuki Fujita, et al.
(P17-22)

5)勤労世代男女の老後と死についての意識と健康関連行動との関連
Views of Old Age and Death Held by Working-age Men and Women and Their Relationship to Health-related Behavior
日置敦巳(岐阜県岐阜地域保健所)、田中耕
(P23-31)
背景:勤労世代の多くで健康習慣に問題がみられる。ここでは勤労世代の老後と死についての意識およびそれらの健康習慣への関与を調査することを目的とした。方法:無作為に抽出した岐阜県南部の男女1,200人を対象として、老後と死についての意識、健康感、生活満足度および健康習慣について面接調査を行った。回答率は78%であった。結果:自分自身が80歳以上まで生きると思っている者は、70歳以上まで生きると思っている者の半分以下であった。男では女より老後の設計ができておらず、女では老後には友人や家族との暮らしを期待している者の割合が高かった。男では、自覚症状が少ないこと、生活満足、健康重視および老後の一人暮らし時の健康不安が、女では、仕事、自覚症状が少ないこと、生活満足、健康重視、老後の社会参加希望、老後の配偶者との生活展望および自己の死についての展望が健康習慣と関連していた。臨終立会経験は健康習慣と関連を示さなかった。結論:本調査の結果は、男では老後と死についての展望に乏しいこと、および避けることのできない死への準備の手助けをすることによってより充実した人生を送れるようにできる可能性を示している。
キーワード:死、老年、平均余命、満足度、保健行動

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